握力鍛錬のススメ

武術において握力は、手と武器を繋ぐ要であり、相手を掴み引きちぎる武器である。握力が強くて損をする事は無い。

例えば、刀の柄を無謀な力で握ってはいけないが、相当な強さで握る必要がある。仮に刀への力の伝達に40kgの握力が必要だとして、握力が40kgの人では全力で握らないといけないが、握力80kgの人であれば軽く握れば良い事になる。剣術で必要な握力は技や体格、刀の長さ・重さや状況によって様々だろうが、いずれにしても、握力の強い者が軽く握る事は出来るが、握力の弱い者が強く握ることは出来ない。

会員諸氏におかれては、握力の鍛錬を欠かす事なく実施していただきたい。

最近の医学の研究では握力が高い人は、握力が弱い人よりも認知症リスクが低いという事もある。養生のためにも握力鍛錬は日課とされたい。

心和流推奨握力鍛錬具、COCグリッパー

さて、単に鍛えよと言われても面白くないので、今回は当流の体力錬成指標になっている、COCグリッパーの紹介をしたいと思う。

COCグリッパー(キャプテンズ・オブ・クラッシュ・グリッパーズ)は、米国アイアンマインド社の製品で、1993年より発売されている高品質ハンドグリッパーである。

航空機にも使われる高品質アルミニウムのグリップに高い滑り止め効果を持つローレット加工が施され、バネは専用に開発されたGR8バネにより強度が安定しており指標として高い精度を持っているため、世界中の握力トレーナーのマイルストーンとして活用されている。

強度別 製品名称強度(ポンド表示)強度(キログラム表示)
ガイド60 lb.27kg
スポーツ80 lb.36kg
トレーナー100 lb.45kg
ポイントファイブ(No. 0.5)120 lb.54kg
No. 1140 lb.63kg
No. 1.5167.5 lb.75kg
No. 2195 lb.88kg
No. 2.5237.5 lb.108kg
No. 3280 lb.127kg
No. 3.5322.5 lb.146kg
No. 4365 lb.165kg

この強度は、グリッパーを完全に閉鎖した際に中央部分にかかる強度であるため、実際に閉じるために必要な握力とは異なる。一般的にNo1を閉鎖する(クローズする)には握力計で60kg程度、No2は70kg以上、No3は100kg程度が必要と言われている。

グリッパーは握力計と異なり、握りこむにつれ幅が狭くなり、完全に閉鎖するためには最後の握りこみの部分まで鍛える必要があるため、単純な握力だけではない難しさがある。

また、アイエムタグという、小さいグリッパーも発売されており。こちらは2~3本の指で閉じる出来るグリッパーで苦手な指を個別に鍛えて効率よくトレーニングする事が出来る。小指、薬指、中指は握りの要、アイエムタグも活用し集中的に鍛えていただきたい。

握力鍛錬の初心者は、いきなり強い強度のものを買ってしまいがちだが、握力鍛錬に近道はなく、軽いものから徐々に買っていくのが良い。金銭に余裕のある方は全部一式セットで買ってしまうのが良い。刃物を研ぐ砥石と同じで、番手は徐々に細かくしていかなければ効率的に研ぐことは出来ない、飛ばして買ってしまうと砥石もグリッパーも効率が大変悪い、金は働けば稼げるが、徒労で失う時間は金で買い戻すことは出来ない。

ある程度握力の強い者は、軽いものを軽視してNo1以上しか買わないという考えを持つかもしれないが、軽いグリッパーを軽んじてはならない、鍛錬前のウォーミングアップや鍛錬後のクールダウン、握力が無くなるまで徹底的に握力を鍛える時、軽いグリッパーは心強い相棒となる。

グリッパーを揃えたら、軽いものから重いものへ、薄紙を重ねるようにひたすら握りこむ事がまず第一であるが、人にもよるがNo2を超えるためには鍛錬に工夫が必要な場合がある。握力専門にトレーニングをされているトレーナーの方は多く、そういった方々の発信している情報にも触れて効率的に握力を鍛錬していただきたい。握力は細かい筋肉や筋、神経を鍛える必要があり、鍛えるのに長い時間がかかる、無理な負荷は怪我や故障の原因で、そのリスクを冒しても一気に強くなることは無いため日々の鍛錬が肝要である。

なお、No3以上をクローズした者は、アイアンマインド社が認定し殿堂入りされる、記事執筆時点で日本人では7名が登録されているようである。前述した通り、握力が強くて武術的に損する事は無いため、会員各位はNo3クローズを目指して日々鍛錬されたい。(ただし、怪我に十分に留意し、武術の稽古に支障のない範囲で。)

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